ウェルビーイングな書道──山口周『人生の経営戦略』を読んで考えたこと
最近、山口周さんの『人生の経営戦略』を読んでいます。
この本では、人生をひとつのプロジェクトとして捉え、「時間」という限られた資源をどこに投下するかという視点が語られています。
そこで登場するのが、
* 人的資本
* 社会資本
* 金融資本
という3つの資本です。
そして、その資本を育てる目的は何か。
それは「持続的なウェルビーイング(幸福な状態)」を実現することだと述べられています。
本を読み進める中で、ウェルビーイングを支える要素として紹介されていた内容に、私は強い共感を覚えました。
なぜなら、それは私が20年以上続けてきた「書道」の価値そのものだったからです。
ウェルビーイングを支える3つの要素
本書では、ウェルビーイングを実現するための鍵として、次の3つが挙げられています。
1. 自己効力感
2. 社会的つながり
3. 経済的安定性
そして私は、この3つすべてが書道を通じて得られるものだと感じています。
① 書道は「自己効力感」を育てる
自己効力感とは、
「自分にはできる」
「自分には価値がある」
「自分の人生を自分でコントロールできている」
という感覚のことです。
私はこれこそが、20年以上書道を続けてこられた最大の理由だと思っています。
書道は、自分の成長が目に見える世界です。
5年前の作品と今の作品を比べれば、その差は一目瞭然です。
昨日は書けなかった線が、今日は書ける。
以前は表現できなかった作品が、今なら表現できる。
そんな小さな成功体験の積み重ねが、「もっとできるかもしれない」という感覚を育ててくれます。
最近取得した国家資格キャリアコンサルタントの学習でも、バンデューラの提唱した「自己効力感」という概念を学びました。
振り返ってみると、書道はまさに自己効力感を高め続ける活動だったのです。
さらに書道は、誰かにやらされるものではありません。
自分でやると決め、自分で取り組み、自分で上達していく。
そこには主体性があります。
そして作品を通じて誰かに刺激を与えたり、アドバイスをして喜んでもらえたりすると、
「自分は誰かの役に立てている」という感覚も得られます。
こうした経験は、書道だけで終わるものではありません。
仕事や人生そのものに対する自信の土台になっていくのです。
② 書道教室は「社会的つながり」を生む
ウェルビーイングの2つ目の要素は、社会的つながりです。
私は書道を集団で学ぶ書道教室の価値が、実はここにあると思っています。
社会人になると、自宅と職場の往復だけになりがちです。
しかし書道教室には、年齢も職業も価値観も異なる人たちが集まります。
会社の肩書きも関係ありません。
純粋に「書道が好き」「書道を楽しみたい」という共通点だけでつながることができます。
これは非常に貴重なことです。
いわゆる「サードプレイス(第三の居場所)」です。
例えば仕事で嫌なことがあった日。
そのまま帰宅すると、モヤモヤした気持ちを抱えたまま翌朝を迎えるかもしれません。
しかし帰りに書道教室へ行き、作品を書き、
仲間と話し、少し笑って帰る。
それだけで気持ちが整うことがあります。
人は意外と、「居場所」があるだけで前を向けるものです。
私は書道教室を、単なる習い事の場ではなく、人生を支えるコミュニティとしても大切にしたいと思っています。
③ 書道は「経済的安定性」にもつながる
3つ目は経済的安定性です。
一見すると、書道とは関係が薄そうに見えるかもしれません。
しかし私はそうは思いません。
私の教室では、単に字を上達させるだけではなく、
将来的に指導できる人を育てたいと考えています。
なぜなら、書道を教える力は、一生もののスキルだからです。
仮に今の仕事がなくなったとしても、
「自分には書道がある」と思えることは大きな安心感になります。
実際に収入を得るかどうかは別として、
人に教えられる専門性を持っているという事実は、人生の選択肢を増やしてくれます。
そして書道という技術は、短期間で身につくものではありません。
だからこそ価値があります。
時間をかけて磨いたスキルは、簡単には奪われません。
そう考えると、書道は精神的な豊かさだけでなく、将来への安心感も与えてくれる存在なのです。
私が書道を続ける理由
今回、『人生の経営戦略』を読みながら改めて感じたのは、
私が書道を続けてきた理由も、書道教室を運営する理由も、
すべてウェルビーイングにつながっているということでした。
書道は単なる文字の練習ではありません。
自己効力感を育てる。
社会とのつながりを生む。
将来への安心感を与える。
そんな力を持っています。
だから私はこれからも、書道を通じて人生を豊かにする人を増やしていきたいと思います。
字が上手になることはもちろん素晴らしい。
でも、それ以上に大切なのは、書道を通じて「よりよく生きる力」を育てることなのかもしれません。
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